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☆ 江戸時代の桃太郎研究 

  

国立東京工業高等専門学校

一般教育科准教授

< 舩戸 美智子 >

 私が桃太郎の研究を行おうとしたのは、学生の頃に、明治時代の作家・児童文学者である巌谷小波(いわやさざなみ)を研究したことがきっかけです。

巌谷小波という人は、まさに「桃太郎」を愛した人で、子どもたちのために多くの「桃太郎」を書き残しました、『桃太郎主義教育の話』のなかでは昔話「桃太郎」の積極的なストーリー展開を絶賛しています。

 以降私は、遡って江戸時代の大衆的な読み物である草双紙というジャンルの中の「桃太郎」を追いかけています。

 

 江戸の人々は子供から大人まで皆、桃太郎が大好きでした。文学だけでなく、浮世絵、歌舞伎、落語にいたるまで桃太郎があちこちに登場しています。

その頃の桃太郎には、爺婆が桃を食べて若返る回春型の話と、桃から桃太郎

が生まれる果生型の話がありますが、書物の中では回春型のほうが古いようです。

 また1992年世界民話博IN遠野というイベントで小久保桃江氏の桃太郎コレクションが展示されており、後日その中の『桃太郎物語』(江戸時代)という本を拝見したのが、小久保氏とのよいご縁でした。

 そして今は、高松の桃太郎サミット(2013)がきっかけとなり、江戸時代の「桃太郎絵巻」を調査しています。松川会長、大久保和彦さんがまとめて下さっている「桃太郎絵巻」の資料に助けられながら、論文をまとめております。

☆ 現代の桃太郎

 

 現代も「桃太郎」は引っ張りだこです。テレビのCMでは携帯電話の三太郎シリーズが話題になっていますし、小栗旬が桃太郎に扮したコーラのCMはかっこよすぎです。そうかと思うと、水曜日のカンパネラが歌うヒップホップでは、頼りなげなゲームオタクの桃太郎が登場しています。これもこの時代を映した桃太郎の一つの姿に違いありません。

 日本人だれもが小さな頃に出会う物語が「桃太郎」。子どもからおじいさんおばあさんまで、誰もがその内容を知っているからこそ、パロディで遊ぶことができます。しかもそれが300年近くも続いている!これはすごいことです!

 近くで言えば私山梨県大月にも桃太郎のゆかりの地が残っています。時代が流れても受け継がれる「桃太郎」に託された日本人の知恵や精神、それらを私たちはしっかり伝えていく使命がありそうです。
 

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